カラオケにおけるオマージュの人とパロディの人2

オマージュの人とパロディの人というふうに漠然と分けてみたわけですが、初期の段階では、オマージュの人はその作品について延々と自分の思いを「語る人」でしょうし、パロディの人は作品に突っ込みを入れてオタ話で人を笑わせるのが好きな「突っ込む人」でしょう。これがカラオケの場でどのように表現されるのか。


今回僕が最も驚いたのは、オマージュの人で、音域が非常に高くて、女の声優さんとまったく同じキーで歌える人がいたことでした(当然男)。歌っている時は完全に女性キャラになりきっているわけです。目をつぶっているとキャラの女の子の声にしか聞こえないのに、目を開けると職場では仕事熱心な先輩男性。これはけっこうきました。目をつぶれば天国目を開けると地獄。転げまわって笑いました。本人が嵌れば嵌るほど周りは面白いという例ですね。


この人が長らく僕が理解できない「マリみて」の大ファンなのですが、ああ、こういうはまり方もあるのか、と思いました。つまり、男であるにもかかわらず、作中の女性キャラの気持ちになれる、完全に感情移入ができるという能力です。これは予想もしていなかった。まったく現場にはとんでもない人がいるものです。そしてこの能力があの卓抜な歌唱を生み出すわけです。この時「語る人」は「なりきって歌う人」に形を変えているわけですけど、底にあるのは作品とキャラに対する愛ということで、やはり「オマージュの人だなあ」と感心しました。


パロディの人の特徴は、誰かが歌うとその特徴をうまく捉えて、面白いことを一言いう。ここには評論の側面もあって、竹熊さんもそうですけど、パロディの人の中には非常に冷静な評論家が住んでいるように思えます。だから評論の方にいく人も多いんじゃないでしょうか。しかもその一言が即妙なので場が盛り上がるわけです。


もちろんアイデアを持って歌も歌うんですが、やはり歌となるとなりきってしまう「オマージュの人」の凄みには追いつかないように感じます。厄介なのは、人の迷惑を考えずなり切るオマージュの人ですが、この日はそういう人はいませんでした。きっとみんなオタカラオケ体験が豊富なのでしょう。


歌を歌わせると人間が出ますね。皆さんのカラオケ体験など聞かせていただけましたら幸いです。


竹熊さん開頭手術だそうですね。ご回復を祈ります。