アニキ アニキ アニキ

天国に行ってきた。
正確に言うと、アニキに天国に連れて行ってもらった。

店のアニソンコーナーに『アニキ自身 水木一郎』というアルバムがあり、前から気になっていたのだが、先日何の気なしに借りてみた。
二枚のディスクの一方は、1曲目から18曲目までことごとく『マジンガーZ』という恐ろしいもの。すべてあのオープニングの同じ曲なのだが、ライブ版あり弾き語り版ありジャズ版ありとアレンジ豊富。車中で、はじめは恐る恐るいっしょに歌っていたのだが(やはりちょっとはずかしい)5曲目を終わるころから完全にバカ状態となり全力で熱唱。いやあバカは楽しい。それにしても同じ曲がこれだけ続いているにもかかわらず、どんどん盛り上がってくるというのも珍しい。
8曲目ぐらいのライブ版で、アニキと一緒にマジンガーを歌うオタクたちの津波のような声が押し寄せるのを聞き「これステージで歌っていたら死ぬほど気持ちいいだろうな」と思う。さらには、最近エンジンがぶっ壊れて車を買い換えたのだが、どうせならパイルダー号と同じ真っ赤な車にしとけばよかったなどと考え出す始末(実際は息子の注文で初音ミクグリーンにした)。
もう一方のディスクは、自分がリアル子供だったころの懐かしい歌が満載で、イントロが流れてくると、あまりの懐かしさに思わず、うはっ、とか、くはっ、とか呻いてしまうシロモノばかりだった。脳がパカッと開く感じだ。バビル2世だの侍ジャイアンツだの、ああああああなつかしすぎるよ。


人の重要な性質の中に「どこかに根付こう」というのがあって、オタクがスペシャルな価値を置く「懐かしさ」という感情は、その性質と深くかかわっていると思う。風景が片っ端から変えられてしまい、根付くべき故郷を見出せない今の日本で、僕は自分を育ててくれたオタク的なメディア文化にもう一度回帰するしかないのかもしれない。そう考えると、水木しげるという人は、われわれが回帰すべき日本そのもののように思えてくる。