水木先生

昨日水木しげる先生が亡くなって、いろんな記憶が走馬灯のように押し寄せてきて困っていました。
そうしたら新潮45が長い追悼エッセイを書かせてくれるということで、とてもありがたくおもいました。


ほんと、えらそうなことは一言も言わない人でした。


なんの虚飾もない人で、本音の人。


自分の興味のあることには、子供みたいに迫っていく人。そして興味のないことは、あっという間に忘れる人。『驚くべき記憶力と、驚くべき忘却力が同居する』と週刊SPA!がコピーをつけましたが、まさにそのとおりの人でした。


戦争に行って、腕が一本なくなって、そんな人生における圧倒的な経験値があるので、僕のちっぽけな悩みなんか一緒にいるだけでいつのまにかほどけてしまう人でした。


ただ話しているだけでも抱腹絶倒の人なのに、その上いっぱい一緒に外国に旅をして、げらげら笑うような事件がたくさんあって、一緒に妖怪探検の本を作って、2005年には、水木さんの語録「本日の水木サン」を作りました。あんなに楽しい仕事はなかったな。


「人間を超えた見えないものに、どうしたら見える形を与えられるか」という同じ問題を共有した大先輩。
水木さんはそれを妖怪を描くということでやり、僕は人間の生活を描くということでやろうとしていました。


「ではまた、あの世で」
これが「本日の水木サン」の最後のページのセリフです。
このセリフがこれほど似合う人もいないでしょう。


思い出は尽きません。


大好きでした。ありがとうございました。


またあの世で、そして夢で会いましょう、先生。