どこからはじめるべきか

僕は東海村の被曝問題に取り組んでいると書きましたが、正直言ってものすごくだらだらと取り組んでます。というか、事務所が東海村のJCOのすぐそばにあって家族が被曝してますから、日常なんですね。事務所にいると被曝して体の調子が悪くなったオバちゃんが愚痴をたれに来ますし、親とメシ食っても被曝者の愚痴、という状況で、被曝した人と話をしてる時間のほうが長いわけです。そういう中で黙々とエロゲの取材などもやっているわけです(いやあ、ひぐらしにはぶっとびました。あ、これはエロゲじゃないね)。そんなわけで肩の力抜けっぱなしでだらだらやってます。それでもずっとやってきたので、最近いろんなことがわかってきました。


たとえば最近あったこと。
東海村では毎年4月に臨界事故で被曝した人のための健康診断をやります。で、僕らは来る人に毎年アンケートをとっています。国はこの事故による住民の健康被害を認めてません。国がこの健康診断をやっている建前は「JCO臨界事故では住民に被害はないんだけど、不安を解消するためにやっている」というものなんです。


ところがこの健康診断にやってくる人間が何年経ってもぜんぜん減らないんですよ。国としては「もういい加減7年も経ってるし、俺たちは科学的に健康に影響があるような事故じゃないとずっと説明してるのに、こんな健康診断になんで来るんだ」と怒ってるわけです。金もかかるし体裁も悪いんで、はっきりいってやめたがってます。で、僕らアンケートとってますから、来る人の本音を聞くわけですよ。東海村の人たちというのは、何回も事故を経験していて「国の公式発表がいかに嘘で固められているか」ということを知り尽くしてるわけです。みんな、被曝量は発表より多いし、放射能を吸ったから喉とか粘膜が痛んだんだと思っているんですね。だから不安で健康診断に来るんです。


健康診断が終わったあと、国に委託されてきた医師たちと話をする機会があったんですが、明らかに腹を立ててるんですよね。何で健康に影響はないと自分たちが口をすっぱくして言ってるのに東海村の村民はわからないのかと。そして徹底的な科学的啓蒙活動をやるべきだ、みたいな事を言うわけですよ。国が公式発表した数値から考えたら、影響があるわけはないんだ、と憤然としてるんですね。


そんな考え方では「不安」はなくならないですよ、根本的に考え方を変えないとだめなんじゃないですか、と言ってきたんですが、果たしてどこまで聞く耳を持っているのか。


僕がおかしいと思うのは、事故直後に実に多くの人がのどの痛みを訴えている(茨城県の出しているデータからも明らかですし、僕も直接何人もの人からのどの痛みを訴えられました)にもかかわらず、「国の発表ではそんなことの起こる数値ではない」として、その原因を調べようともしないことです。だってまず目の前で起こっている現実から手をつけるべきじゃないですか。知り合いの内科医の話では、何かの事故に巻き込まれたとき起こる「不定愁訴」は「からだがだるい」といったぼんやりしたものが多く、具体的にのどの痛みを訴えるのは稀だということです。


東海村にはこういう話がごろごろ転がっています。チェルノブイリなんかもっとすごいんだろうなあ。そして、広島長崎の人たちが通ってきた道でもあるんだろうなあ、と思います。