核廃棄物の海洋投棄

9月30日は東海村で臨界事故が起きた日で、毎年どこかに呼ばれて話をすることになっているんですが、ここのところ大阪です。裁判の経過とか、被曝した人たちのその後の健康状態とか、一年間あったことの報告をします。


大阪ではカップリングでもう一方の講演があって、今年は青森の再処理工場で今行われている核廃棄物の海洋投棄についてでした。お話いただいたのは、東京海洋大学名誉教授の水口憲哉さん。


再処理工場から一日に海に廃棄される核廃棄物の量は、原発の一年分だそうです。再処理の構造上廃棄物の量が多いのは分かっていましたが、僕が驚いたのは海に流された後どうなるかということでした。行政側は「大量の海水によって希釈される」ため影響はないといっているのですが、同様の工場があるイギリスの例を見ると、現実には海の中に道みたいなものがあって、道端に汚染物質のたまりができるらしい。「薄まっても消えないで海底に堆積する。そこで海産物を汚染し、食物連鎖の上位の生物の体内に濃縮し、最終的には人間にいたる」という話が印象的でした。イギリスでは魚しか食べないアザラシが免疫不全になってエイズ患者のように死んでいったということです。英近海ものの魚の高放射能汚染ということで、1980年代に日本でも問題になっています。


再処理工場稼動については反対の署名運動なんかもしたんですけど、一向に止まらなかったですね。目下いちばん問題意識が強いのは、汚染物質が流れてくる三陸の漁業者です。どの程度の影響が出るのかは分かりませんが、こういう背景を知ると、あそこで取れたおいしい魚介類がお店にあっても、ちょっと手を出しづらい。臨界事故のとき納豆や干し芋などの農産物にしばらくの間どうしても手が出なかったことが思い出されます。