身辺雑記

ありがたいことに、次の締め切り原稿がテープ起こしが上がってこないと書けないということがわかった。いつ上がってくるかは分からないけど、それまでは自由の身ということで、久しぶりに身辺雑記など。


僕は誕生日が11月なのだが、その近辺に毎年健康診断を入れている。三年前の検診のとき体重が79キロで、身長186センチの僕の大学時代のベスト体重は74キロだったから、5キロほど太りすぎになっていた。ちなみに185センチの標準体重は75キロである(体重計にはそう書いてある)。医者から体重を落とすように言われていたのだが、翌年体重を量ったら、なんと81キロになってしまっていた。そもそも取材などで一日の運動量は結構あるのだが(オウムの体験修行をやったときは13キロも痩せた。急に痩せたので、医師であった義父の命令で人間ドックに入れられてしまった)、やはり中高年になってきて放っておくとじわじわ体重が増えるということのようだ。これはいかんと思い、去年は健康診断日を目標にして体重を標準体重の75キロまで落とすことにした。
といってもたいしたことは何もしていなくて、ご飯などの炭水化物の量を減らして、週3回の運動の日の運動を少し増やしただけである。8月から始めて、計画ではもっと減る予定だったのだが(うーんダイエットは難しい)目標の11月までには77キロまでしか落とせなかった。4ヶ月で4キロ、月1キロのダイエットである。ちなみに、僕は酒飲みであるが、お酒の量は一切減らさなかった。
幸い4キロ落としただけで少し多めだったコレステルオール値などはすべて平常範囲に戻った。酒飲みの僕は医者にいつもアルコールを減らせといわれるのだが、指標となっているγ―RPGも37とここ3年で初めて平常値に戻った。いつごろからそういう習慣になったかよく覚えていないが、晩飯のときにはまずビールを一本、それからマティ−ニ(というかタンカレーのショット)を一杯やる。本来なら食前酒であるマティーニからなのだろうが、どうしても先にビールをゴキュゴキュ飲みたくなるのだ。さらにワインか日本酒を飲みながら飯を食い、仕上げにはチューハイをチェイサーにスコッチをちびちびやってやがてその場でドタリと眠ってしまう。そして家族の誰かに「布団で寝なさい」と命令されておずおずとそれに従う、という家長としては実に情けない一日の終わりを過ごしているのである。こういう生活をここ何十年かほぼ一日も欠かさずやっているのだから、この肝機能の数値は不思議である。
逆に心配になったのは尿酸値で、生まれて始めて平常値を上回り、たんぱく質を控えるように言われた。炭水化物を減らそうと思って、米の代わりに肉ばっかり食っていたのが原因であろう。このぐらいの歳になってくるとポンコツ車と同じで、修理しようとしてどこかをぶっ叩くと、必ず別のどこかがイカレてくる。
健康診断後も念のために74キロまで体重を落とし、12月中旬にダイエットをやめた。その後、クリスマス、正月と結構暴飲暴食をしたのだが、3月に入っても体重は75キロ台で推移している。77キロまで増えたらもう一度ダイエットを始めようと思っているのだが、しばらくその必要はないようだ。


体重が減ってなにがいいかというと、高カロリーのものを平気でガツガツいけることである。77キロになるまでは自由にやらせてもらうよ、というわけである。それまでは、「医者に体重を落とせと言われているわけだし、こんなもの喰っちゃ本当はいけないのかもしれないな」などと無意識的な罪悪感を感じながら料理を選んでいたのだ。日本人が大好きな(つまり僕も大好きな)カレーにラーメン、カツ丼、焼肉などはすべて高カロリーであるから、これらのものを食うときに罪悪感をいだくというのはあまり楽しくない。
そんなわけで最近はじめたのが近所のラーメン屋巡り。去年死んだ親父の法事の帰りに、突然ラーメンを食べたいと息子が言い出し、偶然入った東海村の「横浜ラーメン 椿家」という店のラーメンが予想を超えて旨かったのがきっかけだ。
メンはむっちりとした太メンで、お好みでいれた半熟ゆで卵もうまかったが、特筆すべきはスープだろう。濃厚なとんこつしょうゆ味なのだがくどくはなく、なんというか、肉の果汁のようにつるつるとのどの奥を走っていくのだ。料理には詳しくないから良く分からないけど、よほどしっかりだしをとっているのだろう。ネットで調べたら「横浜家系ラーメン」と言うんだそうで、あちらこちらで増殖中のようだ。
しかしこういうラーメンを食べると、好みが「あっさり」に傾いてきた中年のおっさんとしては、今度は和風魚介系本家日本ラーメンというようなものを喰いたくなる。ラーメン通の友人によると、勝田の駅前通りにある店がそれ系でうまいらしい。


しかし、現在茨城県の県北地方で「魚介」といったら、これはもう「ベクレル」というものを無視しては何もできないのである。
たとえば、僕なんかはもうトシだからこの魚介系ラーメンが何ベクレルであろうと知ったこっちゃなく、思う存分ズルズルいかしていただくわけだが、じゃあ自分の息子とそのラーメンを楽しく食べられるか、といえば答えは「NO」である。
だからと言って、ラーメン屋で用意してきた放射能測定器をささっと取り出し、ラーメンのスープにメン数本、さらにメンマにネギなどををすばやくぶち込んで「わあ、480ベクレルで基準値以下だから安心だあ」などということができるような強靭な神経は持ち合わせていない。
そしてだんだん静かに逆上していくわけだが、僕が高校生の時から住んでいる久慈浜というこの漁師町には、地物のうまい魚を食わせる店がたくさんあり、子供の入学祝いのようなちょっとした家族の記念日などというときに必ず行ったおいしい鮨屋もある。今だれかの誕生日などに家族でそこに行き、地魚の刺身や桜ダコやメヒカリのから揚げなんかをつつきながらビールを飲み、やがて酒を〆張鶴に切り替えて仕上げに上寿司4人前などをにぎってもらい「やっぱり久慈浜のヒラメの縁側はコリコリしてうまいねとうちゃん」といった会話を交わせるか、といえばやはり答えは「NO」なのである。まったくこんなのは原発事故前は普通にやっていたことなのだ。
たとえばヒラメについては3月22日に北茨城沖で取れた個体から137ベクレルが検出されたので、漁そのものが自粛されている。もちろん、出荷も販売も自粛である。その他にも、
 アイナメ
 カレイ
 スズキ
 ニベ
 メバル
などの海の魚、また、
 イワナ
 ヤマメ
 ウナギ
などの淡水魚も自粛である。
僕は釣りが大好きで国内でも海外でも取材先にまで釣竿を持っていくような人間なのだが、これらの魚は僕がホームグラウンドである茨城でこれまで狙ってきた魚ばかりなのだ。そしておいしく頂いてきたものなのだ。
まったくなあ、と思う。
そしてこういう時期に東京電力の値上げのニュースなんかを見ると、瞬間的に限りなく逆上してしまうのである。
今回はこういうネタは振らないで純粋な身辺雑記にしようと思ったのだが、全然まったくダメですな。


現在出ているのは、2月に「宗教と現代がわかる本2012」(平凡社)で「核という呪い」というレポート、3月にサッカー批評水戸ホーリーホック鈴木隆行インタビューの後編。これから出るのは、「怖い噂」の「加速する核という呪い」と、『先生を流産させる会』という映画を作った内藤瑛亮監督へのインタビューです。